企業の持続的成長において、新規事業の創出は避けて通れない課題である。 しかし、多くの大企業では、組織構造や意思決定プロセスが成熟しすぎたがゆえに、変革の動きが内側から生まれにくい現実がある。

その“構造的難題”に対して、具体的な突破口を提示しているのが、虎ノ門ヒルズに拠点を構える 「ARCH Toranomon Hills」 である。

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目次

  1. 組織の外に「出島」を持つという戦略
  2. 実績が示す「大企業の第二創業」への現実解
  3. 外部知と接続する「開かれた新規事業開発」
  4. 組織変革の新しいアーキテクチャ
  5. 結論

組織の外に「出島」を持つという戦略

ARCHは、大企業の新規事業創出を専門としたインキュベーションセンターだ。
単なるコワーキングスペースではなく、既存事業の制約から離れ、意思決定・スピード・文化を刷新するための「出島」として機能している。

大企業は豊富な資源と人材を持ちながらも、リスク回避的な文化や縦割り構造により、新たな挑戦が難しい。
ARCHはこの構造的課題に対し、「場」と「仕組み」の両面から切り込んでいる。 組織の外部に独立した実験環境を設けることで、変革の“原子”を育て、やがて本体にフィードバックするというモデルだ。

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実績が示す「大企業の第二創業」への現実解

2025年3月時点で、121社・950名以上がARCHに参画し、約330件の新規事業プロジェクトが同時進行している。
年間250回を超えるイベント、約800件のパートナー紹介という数字は、この仕組みが単なる理念ではなく、実効性を伴っていることを物語る。

このような密度の高い活動が成立する背景には、「学習」「交流」「実践」の三層構造がある。
経営層向けの戦略セッションから、担当者層の実務支援プログラムまで階層別に設計されており、個人ではなく組織全体での変革学習を促す点が特徴的だ。

外部知と接続する「開かれた新規事業開発」

さらに注目すべきは、外部との連携力である。
シリコンバレーを拠点とするベンチャーキャピタル「WiL」との協働をはじめ、CIO(Chief Incubation Officer)が常駐し、事業構想から実装までを伴走支援する。
この体制は、大企業が自前主義を脱し、外部の知見を柔軟に取り込むための「開かれた構造」を提供している。

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組織変革の新しいアーキテクチャ

ARCHのモデルは、単なる新規事業支援にとどまらない。
むしろ、大企業が“変わり続ける組織”へと進化するためのアーキテクチャを提示していると言える。
それは、固定化された企業文化や硬直した組織構造を一気に変えるのではなく、「挑戦を許容するエコシステム」を外側から徐々に形成し、やがて内側に浸透させていくアプローチだ。

この手法は、トランスフォーメーションを一時的なプロジェクトではなく、企業の持続的能力として内在化させる道筋を描いている。

結論

——変革は「外」から、しかし「自社の意思」で

ARCH Toranomon Hillsは、企業変革における新しい常識を提示している。
それは、変革を外部委託するのではなく、「自社の挑戦者が、自社の意思で、外部環境を活用して動く」というモデルである。

大企業が再び成長の軌道を描くためには、まずこのような「出島」を持つ勇気が必要だ。
そこから始まる試行錯誤こそが、次の10年を決める競争優位の源泉となるだろう。

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