JIMTOF2026 会場入口の看板

JIMTOF2026(第33回日本国際工作機械見本市)は、一般社団法人日本工作機械工業会と株式会社東京ビッグサイトが主催する、国内最大規模の工作機械の専門展示会だ。2026年10月26日から31日までの6日間、東京ビッグサイトの東・西・南展示棟で開催され、世界22カ国・地域から1,134社(4,422小間)が出展した。キャッチコピーは「果てなき高度へ 羽ばたく技術」。工作機械にAIやロボットを組み合わせた最新のソリューションが数多く披露された。本記事では、ものづくりの最終品質を左右する「磨く」技術に焦点を当て、PolishingHub参画企業の出展内容を現地取材レポートとしてお届けする。

目次

  1. 工作機械の進化と、残り続ける「磨く」工程の課題
  2. PolishingHub参画企業 取材レポート
  3. JIMTOF2026 会場全体の技術動向
  4. まとめ

工作機械の進化と、残り続ける「磨く」工程の課題

切削や研削の加工精度は年々高まり、複合加工機や自動化セルによって、多くの工程が無人で回せるようになってきた。一方で、バリ取りや鏡面仕上げ、最終的な面粗さを整える「磨く」工程は、今も人の手と経験に頼る部分が大きい。

製造業は原材料の高騰や人手不足、地政学リスクによるサプライチェーンの混乱といった課題を抱えている。熟練者が減るなかで、仕上げ品質をどう保つかは多くの現場に共通する悩みだ。会場では、熟練者ときさげロボットが協業する企画展示も行われていた。人の技能とロボットをどう組み合わせるかが、展示会全体を通じた問いの一つになっていた。

📌 仕上げ工程が抱える課題

品質が人の経験に左右される:鏡面仕上げ・バリ取りは熟練の技能に頼りがち

人手不足と技能継承:熟練者の高齢化で、技術の引き継ぎが追いつかない

求められる方向性:誰でも安定した品質を出せる工具・装置、自動化への対応

PolishingHub参画企業 取材レポート

■ 株式会社サンシン

フィルム研磨に特化した専門メーカーである株式会社サンシン(新潟県長岡市)は、東7ホールのブースで、同社が培ってきた精密研磨技術とフィルム研磨装置を紹介した。

JIMTOF2026 株式会社サンシン ブース
株式会社サンシンのブース(東7ホール E7041)

ブースの正面で来場者の目を引いていたのが、透明なカバーの中にロボットを組み込んだ「ロボット研磨装置」だ。ロボットアームにフィルム研磨ユニットを搭載し、ロボットの動作とフィルム研磨機構を組み合わせることで、さまざまな形状の面精度向上を1台でこなせる。ガラス・セラミック・樹脂基板などの端面の最終仕上げや、パワー半導体・シリコンウェハの外径円周部の面精度向上に加え、面取り部や曲面部への追従加工にも対応。ワークごとに専用機を用意しなくても、多品種のワークを自動で磨き分けられる点が大きな特長だ。

サンシン フィルム研磨ユニットと研磨フィルムの展示
フィルム研磨ユニットと、さまざまな研磨フィルム

テーブルの上には、フィルムの送り出し・巻き取り機構を備えたフィルム研磨ユニットと、粒度や基材の異なるさまざまな研磨フィルムが並び、フィルムがどのように送られワークに当たるのかを間近で確認できた。ブースには、このほかにもフィルムを使った研磨装置が複数展示されており、ロボット研磨装置を含め、すべての展示装置がフィルム研磨によるものだった。同社の装置は外径・内径・球面・平面から、ウェハ、ボールねじ・ナット、クランク・カムまで幅広い加工に対応し、ワークの材質や形状、加工箇所に合わせてオーダーメイドで設計・製造される。実際のワークを使ったサンプルテストで加工精度や加工時間を確かめたうえで提案してもらえるのも心強い。


■ 東洋研磨材工業株式会社

研削・研磨の専門商社であり、独自の研磨装置「鏡面ショットマシンSMAP」の製造・販売も手がける東洋研磨材工業株式会社(東京都港区)は、SMAPのⅡ型・ⅡF型を中心に、マドラー式研磨機「STIRREL(スターレル)」や乾式バレル用研磨材「ブライトメディア」を展示した。ブースには「磨きの悩み 簡単に解決してます!」の文字が大きく掲げられていた。

JIMTOF2026 東洋研磨材工業株式会社 ブース
東洋研磨材工業株式会社のブース(小間番号 S1017)

SMAPは、見た目はサンドブラストのようだが、エアーを使わずにゴム質の研磨メディアを投射し、金属を誰でも簡単に鏡面に仕上げられる装置だ。ワークを手で持って加工するため治具が不要で、特別な技術もいらない。エアーを使わずにメディアを投射するので加工時間が短く、メディアはゴム質なので素地を傷めない。乾式研磨のため後処理が不要で、管理も楽だ。研磨メディアは30種以上のラインナップから用途に合わせて選べ、手では磨きにくい複雑な形状の加工を得意とする。金型だけでなく、エンドミルなどの切削工具の磨きにも使われている。職人の高齢化や若手の技術習熟、磨き作業の属人化、研磨外注先の廃業による内製化の検討といった悩みを抱える現場に向けた提案だ。

東洋研磨材工業 鏡面ショットマシンSMAPと磨きサンプル
SMAPの実機と、手に取って見られる磨きサンプル

ブース中央のテーブルには「SMAP 磨きサンプル 手に取ってご覧下さい」として、加工前と加工後を比べられるサンプルが数多く並べられていた。サンプルの材質は、金型用鋼材として知られるSTAVAXの切削加工面をはじめ、真鍮の部品、アクリル樹脂までさまざま。STAVAXのサンプルには「ハンドラップ → SMAP F300D」と記されていた。金属だけでなく樹脂の磨きにも使えることを、実物で確かめられる展示だった。


■ 株式会社イチグチ

研削・研磨ツールの専門メーカーである株式会社イチグチ(京都府相楽郡精華町)は、ポリゴンバンド、マイクロフラップ、セラミックフラップホイルなどの小径ツールを中心に展示した。ブースの正面には「小径ツールシリーズ」の文字が掲げられ、研磨布や不織布を使った軸付きのホイル・バンド類が、製品ごとの説明パネルとともにずらりと並んでいた。

JIMTOF2026 株式会社イチグチ ブース
株式会社イチグチのブース(小間番号 W4056)

小径ツールは外径がコンパクトなため、狭い箇所や小さな穴の周りの研磨に適している。適度な柔軟性があるので削りすぎを防いできれいな仕上がり面が得られ、精密に成型されているため、高速回転で使っても芯ブレがほとんどないという。通常のアルミナ砥材に加え、超硬合金などの難削材向けに、セラミック砥材やダイヤモンド砥材を使ったセラミックフラップホイル、ダイヤマイクロフラップ、スーパーダイヤフラップホイルなどもラインナップしている。

イチグチ フラップホイルとディスクの展示
さまざまなホイルやディスクが並んだ展示

小径ツールのほかにも、同社の主力製品であるテクノディスクをはじめとする研磨布・不織布のディスク、スコーライトホイルやポリライトホイルなどの不織布ホイル、ダイヤモンドシリーズ、レーザー・タレパン・シャーリング等の加工時に発生したバリの除去に向けたスリット研磨輪(フラップタイプ・合わせタイプ・マイルドタイプ)まで、幅広い製品が展示されていた。ブースの壁面には「研磨の新時代へ! イチグチのツールはロボットアームにも対応」と掲げられ、手作業だけでなくロボットによる研磨の自動化にも対応できる点をアピールしていた。

JIMTOF2026 会場全体の技術動向

今回のJIMTOFで特に目立ったのが、AIとロボットの活用だ。加工工程の設計や不具合対応にAIを使う提案や、工作機械とロボット、周辺機器を一体化した生産セルの提案が数多く見られた。南4ホールの「AM ZONE」では、金属3Dプリンターをはじめとする積層造形も紹介された。人型ロボットを題材にした企画展示では、関節部品などの高精度加工や量産化に工作機械がどう貢献するかが示された。

こうした流れは、加工の後に続く「磨く」工程にも及んでいる。加工の自動化が進むほど、最後に残る仕上げ工程の自動化や、品質の安定がより強く求められる。研磨材や研磨装置のメーカーにとっても、自動機やロボットへの対応が重要なテーマになりつつある。

📊 JIMTOF2026 概要

正式名称 JIMTOF2026(第33回日本国際工作機械見本市)
会期 2026年10月26日(月)〜31日(土)
会場 東京ビッグサイト 東・西・南展示棟
出展規模 22カ国・地域、1,134社・4,422小間
キャッチコピー 果てなき高度へ 羽ばたく技術
主な企画 人型ロボット企画展示、きさげ企画、AM ZONE ほか

まとめ

JIMTOF2026の取材を通じて、工作機械業界がAIやロボットを取り込みながら、製造プロセス全体の自動化・最適化へと大きく進んでいることを実感した。その一方で、最終品質を決める「磨く」工程では、人の技能を道具や装置で補い、誰でも安定した仕上がりを出せるようにする取り組みが着実に進んでいる。

サンシンのロボット研磨装置とフィルム研磨、東洋研磨材工業の誰でも鏡面に仕上げられるSMAP、イチグチの小径ツールをはじめとする幅広い研磨ツール。手法は違っても、いずれも熟練の技に頼ってきた磨きの工程を、より手軽に、安定した品質で行えるようにする提案だった。

PolishingHubでは、今後も「磨く」技術と、その自動化の最新動向を追い続けていく。