液体の状態を電極とAIで読み解き、現場での「次の一手」を提示する——株式会社DigiTasteは、独自のEIS(電気化学インピーダンス分光法)技術と機械学習を組み合わせ、工業用液体(塗料、研磨剤、洗浄液など)の品質判定と異常検知を可能にするセンサーシステムを開発している。ラボ分析に頼る従来の品質管理から、現場での即座の判定へ——その転換を実現する技術だ。
現場が抱える課題
従来、液体の品質をその場で把握する手段は限られていた。高価なラボ分析機は大型かつ専門知識を要し、製造現場でのリアルタイム運用は困難。一方、密度計や粘度計といった単一指標センサーは限定的な情報しか提供できず、性質の異なる液体状態を誤って「同じ」と判定してしまう課題があった。
特に、既存センサーでは「正常」と判定されたものの中に、実際には不良となりうる液体が潜んでいる課題がある。例えば、塗料のように粘度・密度といった従来の指標では正常と判定されても、内部の組成や化学反応の進行状況によって、その後の特性が変わってしまうといった「隠れた異常」が存在する。こうした異常を従来センサーで検出することは不可能に近い。
「量」でなく「状態」を観る技術
DigiTasteの中核技術は、4電極EISによって液体の電気的特徴を多次元スペクトルとして取得し、機械学習で「理想状態」との類似度を判定する点にある。単一成分の絶対値でなく、複合的な「状態」のパターンを相対評価することで、水を追加するといった具体的な改善アクションの提示まで行う。試薬レス・前処理不要で、現場に持ち込める小型設計となっている。
従来センサー
✓ 数値が出る
✕ 複合状態は見えない
✕ 改善案は出ない
DigiTaste
✓ 数値が出る
✓ 複合状態がわかる
✓ 改善案が出る
3ステップで液体を可視化
専門知識がなくても、現場の誰もが使えることを目指した設計になっている。
STEP 01
理想状態を設定:良品ロット(理想的な塗料・研磨液など)をセンサーで測定し、基準として登録。テンプレート化して再利用できる。
STEP 02
液体を測定:対象の液体にセンサーを浸すだけ。約10秒で多周波数データを取得。現場でリアルタイムに測定が完結する。
STEP 03
次の一手を受け取る:測定データと基準状態の類似度を分析し、「使用可」「希釈が必要」「交換推奨」などの判定を即座に表示。その日の処理判断が現場で確定する。
想定される活用シーン
● ロット差検出
仕入先から到着した塗料・研磨液について、従来の密度・粘度では判定できないロット間の微妙な成分差を検知。後工程での品質リスクを事前に把握できる。
● 経時劣化の追跡
塗料や研磨剤作製後、時間経過とともに進む化学反応の進行度合いをリアルタイムで可視化。最適な使用タイミング、交換判断の根拠が数値で得られる。
● 既存センサーをすり抜ける異常検知
粘度・密度では正常と判定されても、内部の組成バランスが崩れているサンプルをキャッチ。廃棄コストや後工程での不良発生を未然に防ぐ。
● 環境・時間に起因する変化検知
温度変化、長時間保管による劣化、混合物のセグメンテーション(成分分離)といった、現場環境で自然発生する液体の「状態変化」を自動検知。
外部評価・受賞歴
DigiTasteはこれまで複数の国内外イベントで評価を受けており、2025年にはIPA(情報処理推進機構)の「未踏アドバンスト」にもイノベータとして採択されている。
2024.10 FoodTechグランプリ2024 最優秀賞・UnlocX賞
2024.10 IEEE GCCE 2024 Excellent Demo Silver Prize
2024.10 SKS Japan 2024 招待出展
2025.03 Foodtech Venture Day NEO ベースフード賞
2025.07 独立行政法人IPA 未踏アドバンスト事業 イノベータ認定
2026.06 東京都主催ASACスタートアップアクセラレーションシードプログラム採択
まとめ
DigiTasteは、液体の絶対量ではなく相対的な「状態」を捉えるという独自アプローチにより、工業現場の品質管理に新たな選択肢を提示している。従来は「ラボに送付して数日待つ」か「経験で判断」という二者択一だった意思決定が、現場でその場に判定・改善できる時代へ。2026年2月設立という若い企業ながら、複数の受賞歴とIPA未踏アドバンスト採択を通じて技術力への評価を得ており、今後の実装事例が注目される。
株式会社DigiTaste
DigiTaste Inc.