株式会社東光舎とは
株式会社東光舎は、1917年(大正6年)創業の理美容鋏メーカーである。ブランド「ジョーウェルシザーズ」のもと、理美容用鋏とペット用鋏(ドッグウェル)の開発・製造・販売を一貫して手掛けている。本社は東京都文京区本駒込に置き、東京ショールームを併設。生産拠点である岩手工場は、岩手県岩手郡岩手町に所在する。
岩手工場の沿革と規模
東光舎は1955年以降、東京・板橋工場で生産を行ってきたが、1981年に岩手工場の操業を開始。1989年には東京工場を閉鎖し、生産機能を岩手工場へ統合した。理美容鋏専用の工場としては日本最大級の規模を誇り、最新設備を備えている。
岩手工場のあゆみ
一貫生産体制と技術力
岩手工場には開発・研究部門が設置されており、鋏の基礎研究から新製品の開発、製造までを一貫して行う体制を整えている。職人の手による技と最先端の技術を組み合わせて生み出されたシザーズは、国内はもとより世界へ向けて出荷されている。
シザーズができるまで(製造工程)
※岩手工場での製造工程を取材したYouTubeチャンネル「industories!」の動画をもとに構成(一部工程は非公開)
参考動画:岩手工場での製造工程
地域とともに歩むものづくり
東光舎は、岩手県特産の伝統工芸「漆」とのコラボレーションにより、漆塗りシザーズを展開している。天然樹脂塗料である漆を用いた製品づくりを通じて、地域の漆産業復興に貢献するとともに、ハサミ作りの伝統・文化・技能を未来の世代へ継承する取り組みも進めている。このほか、希望に応じた工場見学の受け入れや、プラスチック製パッケージから紙製への切り替え、アフターサービス(研ぎ)による製品の長期使用促進など、持続可能なものづくりへの姿勢は、岩手町が「2020年度SDGs未来都市」に選定されていることとも重なる。
まとめ
1917年に医療用器具メーカーとして創業し、1921年より理美容鋏の製造を開始した株式会社東光舎は、2017年に創業100周年を迎えた。日本最大級の規模を誇る岩手工場では、職人の技と最新設備、そして研究開発体制が一体となり、国内外の理美容・ペット業界を支えるものづくりが続けられている。
現場で見た、匠の技へのこだわり
今回の取材では、レーザーカットから溶接、焼き入れ、そして職人による最終調整まで、ハサミが生まれる全工程を実際に見学した。数値だけでは伝わらない、ものづくりの現場ならではの緊張感と徹底したこだわりがそこにあった。
刃の部分はレーザーやワイヤーカットによって精巧に切り出される。かつて手作業で行っていた溶接工程には、現在ロボットを導入。ねじれや曲がりを防いで品質を安定させながら、多品種への対応力も両立させている。
焼き入れで硬度を高めた刃は、その後、砥石を用いた手作業で丁寧に研磨される。とりわけ刃の裏側に施す「裏スキ」と呼ばれる微細な加工は、機械だけでは完結しない、職人の手によるものだ。
噛み合わせ調整――ミクロン単位の職人技
開閉時の感触や刃の間から漏れる光の具合を確かめながら、専用のハンマーで叩いて微調整を重ねる。「40年やってもまだ見えない」という言葉が、この工程に求められる感覚の繊細さを物語っている。
日本の美容師は世界でも屈指の要求水準を持つとされ、東光舎はその声に長年応え続けてきた。刃渡りのわずか2ミリの違いや、スキバサミの梳き率(10%〜30%程度)、切った後のスタイリングのしやすさまで、プロならではの繊細なこだわりに寄り添った製品づくりが行われている。