株式会社Soilookは、産業用ガス検知警報器大手の理研計器株式会社と共同で、赤外線技術とAIを組み合わせたアンモニアガス漏えいの可視化システムを開発している。目に見えないガスの漏えい箇所を画像として捉え、2028年夏の市場投入を目指すこの取り組みについて、開発の背景と技術的な特徴を紹介する。

目次

  1. 「点」で測るガス検知から、「面」で見る安全管理へ
  2. 赤外線+AIでアンモニアの存在を判定
  3. アンモニア利用拡大とともに高まる「安全」の重要性
  4. Soilookが目指す「見えないものを見えるようにする」技術
  5. 製造現場の安全管理にも広がる可能性
  6. まとめ

「点」で測るガス検知から、「面」で見る安全管理へ

一般的なガス検知器は、センサーが設置された地点にガスが到達することで濃度を検知する仕組みだ。これに対し、赤外線カメラによるガス可視化は、空間を「面」として捉えられる点が大きな特徴となる。

Soilookでは、中・遠赤外線領域におけるガス固有の光吸収特性を利用した赤外分光技術を研究している。ガスごとに吸収する赤外線の波長が異なる性質を利用し、空間中に存在するガスを二次元画像として捉え、ガスの有無や種類、漏えい箇所を視覚的に把握する技術だ。

従来の検査には、「どこから漏れているのか分からない」「検知器を持って現場へ近づかなければならない」「点検作業に人手と時間がかかる」といった課題があった。ガスをカメラで可視化できれば、安全な場所から広い範囲を確認し、異常箇所を早期に絞り込める可能性がある。

Soilookが提供するガス可視化検査では、小規模漏えいを数メートル先から、大規模な漏えいでは最大100m離れた位置から確認できるケースもあり、安全な場所から検査できることを特徴としている。

従来の検査における課題

どこから漏れているか分からない
検知器を持って現場へ近づく必要がある
点検作業に人手と時間がかかる

赤外線+AIでアンモニアの存在を判定

理研計器とSoilookが共同開発しているシステムは、赤外線技術とAIを活用してアンモニアガスを可視化する。理研計器によれば、従来把握が難しかったガスの漏えい箇所を直感的に把握できるようにすることで、安全対策の高度化につなげることを狙いとしている。

現在は実証実験が進められており、2028年夏の市場投入を予定している。さらに2026年9月には、開発中のシステムについて、カメラから約30m先までのアンモニア漏えいを確認した実証結果や、可視画像と赤外画像を組み合わせAIでガスの有無を判定する仕組みも紹介されている。

つまり、ガス検知器が「点」で異常を捉えるのに対し、ガスカメラは「どこで、どのようにガスが広がっているか」を面で捉える。両者を組み合わせることで、安全監視の精度をさらに高められる可能性がある。

開発スケジュール

現在 実証実験を実施中
2026年9月 約30m先までの漏えい確認結果を紹介
2028年夏 市場投入を予定

アンモニア利用拡大とともに高まる「安全」の重要性

アンモニアは次世代エネルギーとして活用拡大が期待されている。発電設備だけでなく、船舶燃料をはじめとする新たな用途でも検討が進んでおり、今後は製造、貯蔵、輸送、利用まで幅広い現場で安全管理の重要性が高まっていくと考えられる。

液化アンモニア運搬車のイメージ画像

陸上輸送

アンモニア燃料船のイメージ画像

海上輸送

だからこそ重要になるのが、「漏れた後に検知する」から「漏れ方まで見える」安全管理への進化だ。人が危険な場所へ近づく前に異常を把握できれば、作業員の安全確保だけでなく、設備停止時間の短縮や検査作業の省人化にもつながる。

これは単なる検査機器の進化にとどまらない。プラントや工場における保安業務そのものを、データと画像を活用した「スマート保安」へ変えていく取り組みともいえる。

Soilookが目指す「見えないものを見えるようにする」技術

Soilookは香川県発の大学発計測スタートアップとして、「成分分析で世界の見方を変えれば、未来の安心・安全は変えられる」を掲げている。

代表的な取り組みが、ガス可視化カメラとクラウド型検査支援アプリを組み合わせた「GASGRA」だ。同社ではガス可視化システムの提供だけでなく、現場での検査サービスや、赤外分光技術を利用した企業との共同研究・PoC(概念実証)にも対応している。

今回の理研計器との共同開発も、Soilookの赤外分光技術を社会実装へつなげていく重要な取り組みの一つといえる。

soilook_表彰画像

製造現場の安全管理にも広がる可能性

研磨、塗装、化学、半導体、エネルギーなど、製造現場ではさまざまなガスや化学物質が使われている。設備の老朽化、人手不足、熟練者不足が進むなか、「人が巡回して異常を探す保全」から「センシングによって異常を発見する保全」への移行は、今後の製造業にとって重要なテーマとなる。

ガスを「見える化」する技術は、作業員の安全確保、ガス漏えい箇所の早期特定、巡回点検の省人化、遠隔監視、点検データの蓄積、設備保全の高度化など、幅広い活用につながる可能性がある。研磨業界においても、工場の安全性や作業環境を高める技術として注目できる領域だ。

ガス可視化技術の活用シーン

作業員の安全確保
ガス漏えい箇所の早期特定
巡回点検の省人化
遠隔監視
点検データの蓄積
設備保全の高度化
soilook_製造現場

まとめ

理研計器とSoilookは現在、アンモニアガス可視化システムの実証を進めており、2028年夏の市場投入を目標としている。今後は発電、化学プラント、船舶をはじめとするさまざまな現場への展開が期待される。

目に見えなかった危険を、見えるようにする。赤外線、AI、ガス検知技術を組み合わせることで、製造現場の安全管理は新しい段階に入りつつある。Soilookは今後も、赤外分光技術を活用したガス可視化を通じて、安心・安全な社会の実現を目指していく。

これまで

「点」で異常を検知
漏れた後に気づく

これから

「面」で漏れ方まで可視化
2028年夏の市場投入へ

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